朝から降っていた雨が上がる。
午前中に行われていた、プレトークイベント会場となっている音楽室をこっそり覗いてみると、金色の温かそうな空間でみんなが語り合う輪があった。その空間のエネルギーにすっかり及び腰になってしまい、やっぱり・・・なんて、晴れてきた空とはうらはらに、胸の中にはどんよりと雨雲が敷き詰めるのだった。
このワークショップでは、一枚ずつ服を脱いでいったところにある、ありのままの自分を見つけられると聞いていた。もちろん役者さんがどんなことをしているのか、とても興味がある。しかし、それよりも、怖いもの見たさというのだろうか。ちょっとだけ、自分の中にある今まで気がつかなかった自分を見てみたいという好奇心から、参加を希望していたのだった。でも良く考えてみれば、気がつかない自分はどんな自分であるか分からないわけで、なんだか突然飛び出してきた、どうしようもなく変てこりんな個性に収拾つかなくなったらどうしよう。・・・しまった。などと思っているうちに、劇団の方のきらきらの笑顔に誘われて会場へ。
最初は、天然工房流芝居作りのレシピのお話。がちがちの緊張もどこかへ消え去り、目からはウロコがぼろぼろとこぼれ落ちる有様。
あの日、あの時、あの瞬間。これを知っていたら、もう少し上手く立ち回れていたに違いないのだ。やはり色々な物事には、コツがある。つい感情的に動きがちだが、一歩引いた所から、伝えたい事柄にプラスしたりマイナスしたりすることで、スムーズかつ伝えたい事柄の等身大に近づけられる。コツは大事だ。数学の公式や、英語の文法みたいに。役者さんは人に興味があって、人を良く見ていて、人が好きだから、感動させる舞台が出来上がるのだろう。お話の間中、レシピにわくわくした。
続いて行われたゲームでは、みんなが燃えた。高校生も大人も関係なく、みんなが己の勝ち進むことに精一杯で素晴らしかった。戦っているのにもかかわらず、どっと笑いが溢れ、しかも数々のギャグが生まれる。私には、今だに口元が綻ぶ一場面があるのだ。心からありがとう、と思う。
そして最後のプログラムで一体感というものを体験した。体験したというより、体験する一歩手前まで行ったと言う方が正しいかもしれない。
参加者のみんなと呼吸を合わせていくと、熱気で会場がいっぱいになった。ひとりひとりを見渡せば、みんな楽しげできらきらしていて、自分の心にまでそういう温かいものが入ってくるのか、体中が熱くなっていくのがわかる。けれど、どうしても周りのみんなみたいに、楽しいという空気の中に身を置ききれない自分をはっきりと感じてしまった。もう一歩踏み出そう。そう思っても、かたくなに踏み出さない自分がいた。
結局、最後まで、この違和感のようなものを感じたままだったのがとても残念だった。自分の壁を打ち破って踏み出すのは、思いのほか難しいものだ。たかが一歩。されど一歩。深く、ちょっと重くのしかかっている。
しかし今回は、そういう壁があるということが自分で分かったというのも大きな成果である。やはり変てこりんだけれど、仕方が無い。次回は是非、その一歩を踏み出したいと思う。きっと、そこを超えたらすごく楽しい。会場にいたみんなの顔を見ていたら、そう思わずにはいられなかったのだ。参加したからには、私も見てみたい景色である。
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